Old Lens 0054 > FUJI PHOTO FUJINON-EX 1:2.8 f=50mm [281882]「大好きなオルソメター型・・・素直で歪の少ない理想形・・・唯一の弱点は明るさ・・・でも問題なし!」


FUJI PHOTOの引き伸ばしレンズ2回目です。

随分前になりますがソフトフォーカス化したレンズの曇り除去前後の紹介をして以来の登場です。

現在、所有の引き伸ばしレンズは30本程ありますが、最初に入手したレンズが今回の紹介レンズで、30本余りに膨らむ切っ掛けになったレンズでも有り・・・お気に入りレンズです。

引き伸ばしレンズの多くは無理のない設計「当時は設計限界」で明るさの限界は有るが各種収差補正が良好で素直な描写性能が転写に向いていた関係でテッサー型が多く採用されていましたが、ツアイスの傑作、絞りを挟みトリプレット型の対象配置、鏡面の様なオルソメター型及びそのバリエーションに変わっていきます。

オルソメター型はイメージサークルが広く歪曲収差の補正に優れ引き伸ばしレンズに最適な構成だったと思われます。

レンジファインダ時代の主流レンズ構成でしたが、一眼レフ時代になりミラーのスペース確保と明るさが必要になり、設計上明るさの限界に達していた事で手持ち撮影が基本の35mm一眼レフでは採用されなくなりましたが、今も大判カメラレンズで多く採用されている大変優れたレンズ構成で、ミラーレス時代になりバックフォーカス問題もレンジファインダー時代と同等になり、ASA感度や手振れ補正の驚異的な向上により明るさの問題もRAW撮影後の現像で無視できる様になり、超広角や広角レンズで再び脚光を浴びるかもしれない予感がします。

兎にも角にもシンメトリー好きの私には理想のレンズタイプに感じられます!

超コントラスト・超解像度ではないかも知れませんが、精緻で自然体な描写を体験してみてください。





こちらの2枚は何れも開放F2.8で快晴の為にハイキーな仕上がりですが、ピントの合わせ位置の違いで、同じ条件で撮ったとは思えない描写の違いが有ります。

1枚目は橋の中央付近にピントを合わせて撮影しましたがF8に絞ったパンフォーカスの様に全体にピントが合い緻密で質感も見事です。決して派手なコントラスト、これ見よがしな解像度では無く、文句の付け様の無いナチュラルな美しい写真になっていると思います。

2枚目は右ボールにピント合わせてあります。手前のポールは精緻な描写で画面の端にもかかわらず像面収差も良く補正され、引き伸ばしレンジに求められる歪の無さが見事で、加えて背景のポートタワーが綺麗にポケて、単純な正確さだけでは無くボケ味も素直で優秀です。

この2枚に紹介レンズの全てが写っている様に感じます・・・明るく爽やか・・・素晴らしいの一言です!















海の近く、障害物もない光がとても爽やかに表現され、気持ちが晴れ晴れとします。

ハイコントラスト陰影に富んだ写真も確かに見応えが有り素晴らしいとも思いますが、このレンズの明るく爽やかな描写で、誇張感の無い自然体な写真・・・私は大好きです。

主役は橋でもなく・・・南極観測船でもなく・・・もちろんオブジェでもありません。晴天の港です・・・気持ちが良い1日でした!!!









後半は港から5キロほど内陸へ、古大木に囲まれた1900年以上の歴史が有る
熱田神宮「三種の神器の1つ・草薙神剣を神体とする天照大神が鎮まっています」で港とは別の表情を撮影してみました。

港では遮るものがない光のせいかハイキーで爽やかさの表現が主になりましたが、今回の熱田の森では港とは正反対の黒の表現が大変重要になると思います。
黒をいかに黒く表現できるかにより写真の質が決まってしまうシチュエーションになります。
このシチュエーションにどれだけ対応できるのか楽しみです。









此方の写真も開放F2.8での撮影が大半ですが、熱田の森は晴天にも拘らず、ASA200で1/200sが精々1/30s辺りまで遅くなりシャッタースピードの手振れ限界近くまで遅くなってしまいましたので、厳密のは手振れが起きているかもしれません。

黒に拘った場合、大敵は球面収差に依るフレアの存在ですが、流石にオルソメター型、各種収差補正が優秀なのかフレアの存在は心配ありませんでした。





前半に一言パンフォーカスの話題を取り上げましたが、このレンズの場合、絞りの不良で開放しか使えなくとも充分撮影可能かと思われます。

主被写体の距離が3m以上であればほぼパンフォーカスの状態で撮影することができ、1m前後のピント位置であれば背景をぼかすすことも可能で、絞りが壊れている事を逆手に取り、絞りの存在すら忘れ被写体に集中し「ローライ35」の上級版の位置づけでフットワーク良くお手軽で有りながら、作品作りに没頭できるオールラウンダーなカメラに成り得るかもしれません。

「ローライ35」はゾナーとテッサー在りきのカメラですから、代替カメラには成りえませんが・・・本当に良いレンズです。

作品作りを楽しみませんか?





  • 仕様表
発売年月 1994年
レンズ構成(群/枚) 4/6 オルソメター型
絞り羽根枚数 8
最大/最小絞り 2.8/22
最短撮影距離(m) -
マウント leica L39
フィルター径(mm) 49
フランジバック(mm) 38.5
最大径x長さ(mm)x(mm) 54 x 40
質 量(g) 95