Old Lens 0037 > INDUSTAR-50 インダスター50 3,5/50 「オールドレンズ初めの一歩」


1971年製造 インダスター INDUSTAR 50 [50mm F3.5] 今回紹介のレンズ L39ライカマウント


1978年製造 インダスター INDUSTAR 50-2 [50mm F3.5]  M42マウント

比較参考に掲載しましたが、このレンズはM42マウント用に銅鏡を短くし、レンズはさらにコンパクトになり(フランジバックは変わらずレンズ構成は変更なし?)外観は変更されましたが、基本は変わらず両者の違いは発売時期の違いだけかと思っていましたが、今回比較しますと、コーティングの色も少し違うように感じます・・・機会があれば紹介させて頂きます。

インダスター INDUSTAR 50 [50mm F3.5]

Carl zeiss jena Tessar 50mm F3.5のコピーとも称されている由緒あるレンズ?
ある意味オールドレンズの王道の楽しみと、意外な満足度を体験させてくれるロシアレンズ、安価で入手可能な事も有り多くの方がレビューを書かれていますので、製品情報などは皆さんにお任せして・・・少し手抜きです。ごめんなさい ペコペコ・・・

気になりましたので、自分で試し撮りしてみました・・・結論は良いレンズです。

小さく軽いは正義です。レンズに興味を持ち始めると明るく高価なレンズに物欲センサーが反応し加速していきますが、一般的にF値の明るいレンズは大きくて重く、結果「明るいレンズへの期待」が大きすぎ、明るさを持て余し、重いレンズを持ち歩く苦痛に耐えられなくなり、カメラの趣味をやめたり、年に数回催しの出番を待つだけになったり、そんな方達が小さく軽く良く写るINDUSTAR 50にどこかの時点で出会っていれば、今もカメラを続けていたり、復活して楽しく時を切り取っているかも・・・なんて想像してしまうレンズかもしれません。
切れ味鋭いオリジナルテッサーのコピー、切れ味の程は・・・・気になります。

Sony NEX-3 ƒ/3.5 1/250sec iso200
ザックリとした生垣の向うに。何かを見つめる白サバ・・・「見つめる猫を見つめる私」スポットを浴びた顔のシャープさと、前の生垣と後ろの壁のボケ方・・・このレンズ「空気が写る」んです。ボケ過ぎず出会った時の記憶が心象風景として再現される・・・素敵ですよね!


Sony NEX-3 ƒ/3.5 1/160sec iso200
興味津々な白サバ、端正な猫が其処に・・・これも見たまま、記憶の映像の一遍が切り取られています。何故なのか?f値3.5が何だかリアル、左隅の流れも記憶の残像の様でオールドレンズ効果?が出ているかも・・・


Sony NEX-3 ƒ/3.5 1/160sec iso200
このチューリップの印象、期待の切れ味は感じません・・・寧ろ繊細で優しい感じが全体を包み込んで物憂げでとても静かです。やはりf値3.5のボケ方と無理のない設計から生まれるとても素直なボケの影響でしょうか ?


Sony NEX-3 ƒ/3.5 1/60sec iso200
ギョイコウ(御衣黄)も切れ味より繊細で情緒を感じます。トーンも控え目ならボケも素直で控え目、落ち着いた絵作りが妙にリアルな空気を感じます。


Sony NEX-3 ƒ/3.5 1/160sec iso200
午後の光が空気の粒子に反射しているかの様な空気感、光に弱いオールドレンズが左からの光のフレアを取り込み、玉ボケも周りのボケと溶け込みアンニュイな、何処か惹かれる表現です。


Sony NEX-3 ƒ/3.5 1/200sec iso200
繊細で心に残るカット、背景の僅かなボケが何だかリアル感を増しています。トーンも落ち着いていますが、猫の白毛と愛らしいピンクの鼻と口、背景のトーンダウンした緑のマッチングが素敵過ぎる・・・ムービーの断片の様・・・カットの外側の世界までも気になります。


Sony NEX-3 ƒ/3.5 1/250sec iso200
この白猫、頭と尻尾が茶色だったんです。人に近い猫で良くリラックスポーズでサービスしてくれます。このカットも切れ味より繊細で柔らかな感じが白猫にピタリとマッチング、観るたび撫ぜたくなります。


Sony NEX-3 ƒ/3.5 1/80sec iso200
このカット、テッサータイプのレンズが好きでキレ切れスカッと抜けるイメージをお持ちの方には、少々暗く地味で甘い・・・なんだかスッキリしないと感じるかと思いますが、テレビと映画の表現方法の違いに似たものを感じます。今回のレンズは奥行きと空気感に重きを置いた、クッキリハッキリのテレビとは違った様です。


Sony NEX-3 ƒ/3.5 1/80sec iso200
何故か、主題の葉っぱより、平坦な背景のボケが気になってしまいます・・・葉は繊細で緻密に良く撮れていますが、背景は少し記憶の彼方の様な、時間を超えたリアルさが有ります。オールドレンズに良くある、収差の影響のニ線ボケや像面の流れザワツキなど、主題の足を引っ張るレンズが多いのですが、今回はとても良い感じです。


LUMIX DMC-G1 ƒ/3.5 1/30sec iso100
マイクロフォーサーズでも撮って見ましたが、APS-Cでの印象とあまり変化は有りませんでした。センサーサイズよりiso100設定の効果でしょうか、肌理が細かくソフトで淡くなった気がします。


LUMIX DMC-G1 ƒ/3.5 1/40sec iso100
後ろのブランコにピント合わせ、前ボケですが後ろボケ同様素直です。f3.5のボケは極端でなくナチュラルですね。


LUMIX DMC-G1 ƒ/3.5 1/30sec iso100
夕暮れ時、少し前ピンで手ぶれしているようです。ラティチュードの限界も超え暗部は潰れていますが、芙蓉の描写や全体のバランスは合格点です。


LUMIX DMC-G1 ƒ/3.5 1/30sec iso100
誰かが置いた木の実、意味が有るのか無いのか?大きな木の実2.5cm程有ります。初めて見た木の実、薄曇りの夕暮れどう転んでもシャキッと鮮やかは無理な条件、こんな状況も背景の玉砂利が絵にしてくれます。

  • まとめ
INDUSTAR 50 で知りたかったテッサーコピーの切れ味に付いては、残念ながら今回の夕暮れ近くの条件下では無理が有りました。またいつか晴天の光の下で存分に検証したいと思います。

新発見も有りました。INDUSTAR 50のボケ味が素直過ぎて、このブログで良く取り上げるボケの乱れや意外性を全く語る機会が無かった事です。

作例紹介でも触れましたが、現代レンズの進化に拠り、テッサーは切れ味鋭くキレキレなレンズと良く言われていた事が都市伝説化して過去の記憶になりつつ有る様な、加えて50mmはf3.5が一番と言うもう一つの都市伝説?これは正直に言いますと明るく高価なレンズが買えない人の「ひがみ」程度の認識で本当の所、意味が良く判りませんでした。

f3.5は設計に無理が無く、多くはテッサータイプで有る事は見聞きしていましたが、切れ味の鋭さや素直さ、それにどんなアドバンテージが有るのか、今一つ判らないまま今回の新発見、ボケ過ぎないボケが「空気の揺らぎ」を生み、妙にリアルな世界へ連れて行ってくれました。
これは私の心象で、皆が同じく感じる真理では有りません。

例えるならムービーの一コマ、前後に時間の流れが・・・今回のINDUSTAR 50は、そんなレンズでした。

  • 最後に今回撮影機材と被写界深度






SONY NEX-3 + 無印L39-NEXマウントアダプター


PANASONIC DMC-G1 + 無印L39-M4/3マウントアダプター

マウントアダプターはNEX用・M4/3様どちらも無印の中国バッタ物でしたが、マウント側・レンズ側共にガタツキ無くスクリューもスムーズに最後まで周り問題の無い商品でした。


Sony NEX-3N ƒ/3.5 1/160sec iso200


Sony NEX-3N ƒ/8 1/60sec iso320

  • 仕様表
焦点距離 50mm [SONY NEX3装着時75mmレンズの画角に相当]
最大口径比 1:3.5
レンズ構成 推定 3群4枚
画角 46°79′(35mm判フルサイズ一眼レフカメラ)32°08′(APS-C一眼レフカメラ)
撮影距離目盛 ∞~1m
最短撮影距離 1m
絞り羽根枚数 7枚
最大絞り f/3.5
最小絞り f/16
アタッチメントサイズ(フィルターサイズ) 35.5mm
マウント L39 ライカマウント
寸法 約48mm(最大径)全長約44mm
質量 約100g
製造日:1971年--月--日
発売時価格 -円